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ギュッと眼を閉じ…唇にも力を入れて、ふっくらとした肉の部分を内側に隠す。
「………」
接着面を失くした囁かな抵抗が功を奏したのか、何の感触もリアクションも無く…五秒、十秒、十五秒…時間だけが経過していく。
……………をや?
変わらず身体に重みはあるけど、今は近くに息遣いを感じない。
これだけ嫌がる姿を見て気分が萎えたのか、それとも本当は冗談のつもりでやったのにと、冷たい目線で見下ろしているのか。
そうっ…と。
瞼をプルプル震わせながら、片目を開けてみた。
ーーーーら。
「うりゃ。」
「でっ!?」
おでこに走った鋭い痛みは、どうやらデコピンをお見舞いされたようで。
反射的に、
「何す」るんだっ!
…って怒鳴って、仕返しに唾でも引っ掛けてやろうと思ってたのに。
『チュッ…』
最後まで言えなかった。
だって、だって…っ!
あたしが首をちょっとだけ前に動かしたタイミングで、生暖かくて柔らかいモノが〝ちょん〟って顎に触れたんだもん!!
ちなみに、離れたと思ってた山崎さんの顔は息を止めて挙動を窺っていたらしく、位置も同じドアップのままだったという……オチ。
その上、憎たらしい程のドヤ顔全開で、
「…ホレ見てみぃや。こない簡単にやられとるやないかい。… 武田はんは藤堂はんを気に入っとる。つまりやな、捕まってもうたら接吻どころの話しちゃうっちゅー事を言うとんのやで?」
「ヴっ…」
えっらそうに説教まで始めやがったぜ、このキス魔めが。
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