花一匁(ハナイチモンメ)

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そう言えばこの時代に来た当初、替えの下着に困り果てた末素肌を晒した苦い記憶がある。 でも確か山崎さんはただの覗き魔変態で、頼みもしないのに張り切っておパンを作ってくれたっけ… そしてあたしはその品を今も尚、愛用してる訳なんだけど。 ーーーそれはそれ、これはこれじゃん!! 幾らほぼヌードを見られていたとしても恋人じゃあないし、ましてや合意の上でも無い。 というかね、色気なんざ皆無なあたしを見境なく襲うなんて、そっち方面で苦労してるようにも見えないし、疲れも伴ってかよっぽど悪酔いしたんだなぁと思う。 …仕事熱心なのは認める。 新選組の皆はいつも、猫の手も借りたい位忙しいってバタバタしてる日が多くて。 なのに…実際のところ、あたしの正体を知ってる幹部連中は激務を熟しつつ、あたしのフォローを代わる代わる買って出てくれるんだ。 結局今回も何だかんだ、どれだけ悪態をついたり小突いたりしてても、元を正せばあたしの至らなさのせいで、余計な気遣いや気苦労をさせてしまってる。 その事を思えば、何故だか。 処女喪失の大ピンチかも知れないって時なのにさ… 「…お利口にしとき。たんと鳴かせたるさかい…な?」 耳許に熱の篭った息を吹きかけ、やたら甘くムーディーな雰囲気作って色っぽい声で囁かれても。 違う意味で…泣いちゃいそうだよ。
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