花一匁(ハナイチモンメ)

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「…雅…」 いつの頃からかあたしの名は禁句みたいな扱いで、誰かに呼ばれたのは本当に久し振り。 だけど、二人の温度差は身体の熱と同じに天と地ほど遠い。 「…山崎さん、やめ…て…」 それなのに、熱い息が耳から首筋へと移り、柔らかな唇は容赦無く肌を喰む。 「……あっ、い…たっ!」 突然チクリと走った痛みに思わず声をあげたら、 「…大丈夫や。この印しは御守りみたいなもんやさかい。…もっとぎょうさん付けとったら、誰も手ぇ出されへん思うで?」 「ヒッ…!?」 ヌラヌラとした感触が鎖骨を舐め、更に下へと進んでゆく。 その行為がどう発展していくのかは、経験が無くても想像がついた。 「あっ…くぅ…」 背中にぞわぞわと走る奇妙な感覚。 切羽詰まったように吐き出した息は、自分のモノとは思えない程甘い吐息で… 「…や、だめ……だめ、だよぅ…」 拒絶の言葉ですら弱々しく、鼻にかかった喘ぎが漏れる。 「…こない躰クネらせて…煽っとるん?」 「や…違……痛っ…!」 ぴちゃぴちゃと響く卑猥な水音が益々頭の中を痺れさせ、うっとり酔っている内に山崎さんの唇がまた強く吸い付いた。 …ああ…流されちゃう……どうしよう……でも、もうどうなっても…いい…かも…?
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