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だけど頭を過るのは、『一時の気の迷い』とか『なし崩し』とか『後悔先に立たず』とか、ろくでもない名言ばかり。
酔った勢いで襲われてそれを受け入れるなんて、以前のあたしなら絶対にやらないし死に物狂いで抵抗しただろう。
だって繋がるのは身体だけなんだよ?
いっ時の快楽と引き換えに刻まれる記憶は一生のもので、もしそこに『愛』があるのならどんなに辛くても、大切に抱いて行けると思うけど…
今のあたし達に恋愛感情なんてものは無くて、もしも望まれない生命が宿ってしまったら。
…そう考えると怖くなる。
『初めて』が山崎さんってだけでもびっくりなのに、その山崎さんは時空を越えて巡り会った過去の人。
あたしも…何時また、何処かへ飛ばされるかも知れない不安定な存在。
そんなあたし達に子供が出来ても、対処に困るだけだ。
その時はあたしも自分の母親と同じように…捨てて逃げるんじゃないだろうか、と。
悲しい結末まで辿り着いてしまった。
「っ、…イヤ、だ!…やっぱ…ダメ、ダメなんだよ…っ、こんなの…こんな事しちゃ、いけな…いん、だってば…っ!…あたしの事…好き、でも無い…くせ、にっ!!」
必死に藻掻いて藻掻いて身体中で愛撫を拒否して、それでも全く敵わないひ弱な自分に涙が出そうになった。
「う、う…っ、」
「…今頃泣いたかて離してやら……ん………んー?…………」
「……グスン、……??」
…わかってくれたのかな?
突然動きを止めた山崎さんは、じいっとあたしの胸を睨みつけていた。
良かった、やめてくれたんだ…とホッとした瞬間、
「……何じゃこりゃあぁぁぁーーーーっ!?おまっ、これ俺の作ったったヤツとちゃうやん、け……っ……」
「…へ?…今頃何言っ」
「………う、うげばろばろげばァァァーーーーっ!!」
「うっぎゃあああああーーーーっ!!?」
サラシを掴んで引っ張りながら大声で叫び…有ろう事か、その自分で作った隙間の中へわざわざ口を突っ込んで、人をゲロ袋の代わりにしやがった。
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