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「いっぺん死にさらせダボがあっ!」
「ぐえっ!?」
怒りのアッパーカットが炸裂し、モロに顎へ食らった山崎さんは泡じゃなくて、ゲロを噴きながら大の字に伸び沈黙する。
堕ちる前にピクピク痙攣してたけど…まぁ本当に死んではいないから大丈夫だろう。
それよりも…
「ウエェェ、うおっぷ、くっさぁ…っ!」
大量に付着したこの汚物に塗れた身体と着物を何とかせにゃあ、あたしまで貰いゲロしちゃいそうだ。
隣りは山崎さんに酔い潰されてるから起こすだけ無駄だろうし、宿の人を頼るにもこんなみっともない格好でウロつきたくないし…
そこであたしが取った行動とは。
「はーい、お利口だからそのまま気絶しててねー。」
引っぺがしてやりましたよ、山崎さんの着てたモンを褌以外全部。
取り敢えず臭くて堪らない自分の着物やらを脱いで、水筒代わりの竹筒の中に少量残ってた古い水を使い手拭いを湿らせて、汚された胸全体を丁寧に拭いた。
「…ん?こんなトコに痣なんてあったっけ?…まぁいっか…」
んで替えのサラシを手早く巻いて、ちょびっとしかゲロが付いてない山崎さんの着物に着替え、細部の汚れを拭き取れば…
「クンクン…よし、臭いは少し残ってるけど、さっきに比べればだいぶマシになった…かな?」
思った以上にブカブカだけど。
…山崎さんはどうしたかって?
そりゃあなた、褌一丁だけの男を同じ部屋に寝転がしとくのも目障りだったから、廊下に放り出して最低限の親切心で腹を冷やさないように掛けて差し上げましたよ?
罰として、酒臭いゲロがたっぷり染み込んだあたしの着物をね。
朝になったら宿の人とか、誰かしら見つけてくれるでしょうよ。
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