花一匁(ハナイチモンメ)

17/29
前へ
/412ページ
次へ
自分のやらかした痴態によっぽどショックだったのか、 「…何より、俺が納得出来ひんねん…」 視線を微妙に外して、不自然な程何度もチラ見する。 あー…そうね、そうだった。 隊務とか与えられた仕事だけで無く家事や雑用も完璧主義で、今回に至っても面倒臭いと文句垂れながら事細かいとこまで、しっかりあたしの世話焼いちゃう責任感の強い人だもんね。 拒否り続ければその内、逆ギレし出しそう。 …ストレスハゲになれば面白いのに。 山崎さんのハゲ頭か…女顔だし尼僧みたいで、イケんぢゃね? …とか、意地悪な妄想してる場合じゃなかった。 元はと言えば許容範囲を超えるまで飲んだのも、武田さんの毒牙からあたしを守る為だったらしいし… 恋愛経験値がほぼ皆無で下心がどうとか良くわかんないけど、このタイミングで『実際に手を出したのはアンタじゃん』なんて責めようもんなら、まだまだ続くであろう長い旅路の間シコリがコリまくりで、山崎さんと気まずくなっちゃうと思う。 それこそ面倒でヤダな… ここはひとつ、あたしが寛大な大人だってとこ見せてやれば、全て丸く収まるんじゃない? 襲われたとは言えギリ未遂で済んだし、本人も大いに反省してるようだし……うん、今回はそうするのがベストじゃーん。 でもきっと、タダで許せば山崎さんは食い下がるだろうから、 「えっ…とね?…じゃあ、俺の着るもの何とかしてくれたら…許すよ。山崎さんのは、やっぱ少し大きくて動きづらいくて…それにこれにもちょっと、酸っぱ臭いのがこの辺付いてんの。ベタベタしてたから拭いたんだけど、臭いは流石に落ちなくて…」 ちゃんと罪滅ぼし的な仕事を与えれば、納得してくれ… 「…かぁぁ…ホンマかいな……そないトコまで跡付けて…」 …無かった。 あれぇーーー?…おかしいな… 余計に落ち込んだ様子の山崎さんは、 「…どんだけ若気の至りやねん…こないだかて任務で……溜まってへん筈やのに、むっちゃ欲求丸出しやんけ…どないしたっちゅうんや、俺の息子…」 膝の間に頭を埋めるように平伏して、また独り言を始めた。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加