花一匁(ハナイチモンメ)

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蒸し返すのが嫌で、ただ言われるがまま連続で相槌を打ったのは、どうやら正解だったみたい。 「もし次があるんやったら、今度こそ絶対に離さへんって決めとってんやん。苦労かけるか知れんけど…ちゃんと見とくさかいに、自分も一緒に付いて来てな?」 山崎さんの態度も口調も、随分穏和になったもん。 「当然だよー、付いてかないと俺が迷子になっちゃうじゃん。まだまだ先は長いし頑張らなきゃねぇー。」 どんなにツッパってみても、あたしには知識も経験も力も無い。 「そ、そやな。」 あ、今すんごい嬉しそうな顔して認めやがった、こん畜生。 一応和解して二人で微笑み合う。 仲良しこよしになる気は無いけど、それもこれもこの長い旅を無事に終わらせる為だ。 稀に見る山崎さんの大失態は、大目に見てやろうじゃないのさ。 少しだけ成長してる太っ腹な自分を内心で褒めてやりつつ、和やかな雰囲気の中なんだけど目の前の真っ裸男に『いい加減早く着物探して来いよ!』…と本気でツッコミたくなって来た。 「と、ところでさ、着物なんだ、け…どっ、!?」 なのにいきなり、その真っ裸に抱き寄せられて… 頬にピチャリと、酸っぱ臭くて硬い筋肉がくっ付いた。 「ぎゃわあっ!!」 「グハッ!ーーな、何でや!?」 反射的に突き飛ばしてしまい、山崎さんは後ろに倒れて目を白黒させる。
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