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元々は山崎さんの策略だったとはいえ、酒に溺れたのは自業自得。
「そんじゃ先に行ってるぜ。大船に乗ったつもりで、近藤さん達はゆっくり来いよ。」
「う、うむ、すまんな…平助を頼んだぞ…」
「おう!心配すんな、俺が必ず無事に送り届けてやっから。」
「はい、重々心得ております。」
会話もそこそこに、弱ってる三人を置いて二手に分かれ再出発する事となった。
頓所を出る時は本当に憂鬱だったけど、これで武田さん達に気を使う必要が無くなった訳だ。
「さて、それでは行きましょうか。」
「おうよ!」
何故かテンション高めの永倉さんは、意気揚々と先頭に立って歩き出した。
そう言えばこの人の要らぬお世話のせいで、江戸くんだりまで行く羽目になったんだったっけか。
大きな後ろ姿を眺めながら、密かに恨みの念を飛ばす。
「…何見つめとんねん。」
「ぎゃ…!」
すると背後にいた山崎さんの囁きが直ぐ耳元で聞こえ、ビックリして身を引くと眉を寄せた顔がそこにあった。
「な、な、何?」
「何ちゃうわ、他の男ジロジロ見くさってからに。」
「へ?」
「…永倉はんばっか見てんと、前向いて歩きぃや。」
「はあ?そんな事言ったって進行方向にいるんだから、嫌でも視界に入るんだけど?」
「…嘘付け、やたら熱心に見とったやんけ。」
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