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「フン、限界…かな。」
これは夢か幻か。
目の前には忌々しいとばかりに眉をしかめた美形が悪態をつきながら、馬の頭部を足で小突く。
その様子を間近に見てかなりビビりが入ったあたしは二、三歩後ろへ後退りした。
ひど…悪魔かこいつは…
動物愛護団体の方々に知れたらソッコー逮捕されんだろうけど、悲しきかなそれは未来での話し。
しかも止まった場所は雑木林みたいなとこで、一応砂利道はもっと先まで続いてるけれど、助けを呼ぼうにもたまにチョロチョロ出くわすのは、怯えた眼をした地元農民っぽい人ばかり。
つまり巻き込んじゃいけない一般市民。
…ですよねー…この人どう見ても、危ない人だよねー…
あたしが同じ立場でも、関わり合いになんかなりたくない。
…さて…どうしよう?
乱暴にあたしを攫った白馬の王子様…もとい、悪魔王子はまさに馬車馬のように長時間馬を走らせて、恐ろしい事に…泡を吹かせて乗り潰してしまった極悪非道なヤツだ。
本気で抵抗、若しくは逃げたとしても…あっという間に捕まって、それこそ簡単に『捻り潰され』てしまうだろう。
「ま…ここまで来れば君のツレも、流石に追い付いては来れないとは思うけど。」
あたしの方へくるりと振り向き、ニヤリと嗤う男。
確かに、馬の足でこれだけ距離を稼がれては山崎さんといえども、追い付くのは不可能に近い…と思う。
ついでに言わせてもらうと、地理に疎いあたしがどこに連れて来られたのか見当も付かず…
ーーーーあははー、終わったなこりゃ……何であたしばっかこんな目に…
綺麗な笑顔につられて渇いた笑いを返しながら、神様を呪った。
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