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この人、あたしが女だって確信して言ってる!
しかも、泣く子も黙ると恐れられている新選組を『狗』呼ばわりするのは、幕府の方針を毛嫌いしている連中や恨みを抱いている者ばかり。
となると…この誘拐はやっぱり、深い目論見があったんだ。
「…あんた、何者なの?」
後ろ手に砂利を掴み、お尻を擦らせてにじり下がる。
命に関わる、こんな大ピンチはいつ振りだろうか。
いつだって誰かに助けられていたあたしは、つい反射で辺りに人影を探す。
「まだ、思い出せないんだ?…そんな心構えで、今迄良く生き残れたものだと感心さえするよ。」
肩を竦める仕草を見せ、男が距離を詰める。
「どうやら君には危機観念が不足しているようだね。あの連中…余程君を大事に囲っていたと見える。」
その物言いは多分、敵である自分の顔を忘れている警戒心の薄さや、新選組においてあたしが未だに弱者であると見抜いての発言なのだろう。
ーーーでも!あたしだってそれなりに頑張って来たんだよ!!
悔しさに下唇を噛み、砂利を握り締めた。
敵わないってわかってるんだから、逃げる事だけ考えなきゃいけないのに…やっぱり言われっ放しは性に合わなくて。
「…さっきから黙って聞いてりゃ、好き勝手ばっか言ってくれちゃってさ。」
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