花一匁・其の二

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掴まれた腕。 射抜くような眼力。 暫くの間身を潜めてたって言ってたけど、この先はまた…あたし達と敵対すべく情報を引き出すつもりらしいと感じた。 「し、知らないよ。あたしは付いてくだけだもん…」 「本当に?」 『伊東甲子太郎』 名前は教えて貰ってても、性格に多少難がある人としか知らないから嘘じゃない。 「本当だってば!会った事もない人だよ!!」 一段と距離を詰めた綺麗な顔にたじろぐ。 「だったら君が行く意味なくない?」 納得がいかないのか、吐けと言わんばかりに鼻先が…桃色の薄い唇が近付いて来た。 「だっ、だって!あたしは知らないのに向こうが知ってるから、取り敢えず行って来いって…!」 「…何それ?支離滅裂なんだけど。」 えーえーそうでしょうとも、本人も意味不明で嫌々なんだから。 流れに逆らえず言われるがまま『平助』の代役を演じては来たけれど、そもそもあたしは女だし歴史に無知だからどう振る舞えば正解なのかわかんないし、最初から無理があり過ぎなんだよ… そこの所を察してくれたのか、 「そんな泣きそうな顔して…嫌なら断ればいいじゃない。君、一応は幹部の肩書きあるんでしょ?」 軽く溜息を零した後に手を離し、ポンポンと頭を撫でて来る。 「…組長なんて、好きでやってるんじゃない。…あたしは…いつだって皆の足手まといで…」 ポロリと漏れた弱音。 「まぁそうだろうね。女子の身で有りながら、あの荒くれ者達を御すのは骨が折れると思うよ。況してや君は他所者だし…内情に通じてない者に幹部を任せるだなんて、新選組の連中は何を企んでいるんだか。」
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