花一匁・其の二

16/28
前へ
/412ページ
次へ
いやいやいやいやお兄さん、今のどこに惚れる要素が? ロマンチズムも大概にしろって話しだ。 まさかアレか? 漫画や映画なんかで良くある、人は危機に瀕した時…同じ体験をしている異性に惹かれるっていう刷り込みってヤツなのか? 偶然とか必然とか…なら、あたしがこの時代に飛ばされたのは、この人に出逢う為だったって事? ………ナイな。 時を越えたのは運命の相手と出逢う為なんて、ネタとしては有りきたり過ぎっしょ。 大体、それを言うなら本物の『平助』はどうなんの? お互いの運命の相手が違う時代にいるからとか、若しくはどちらかのお相手が違う時代にいるからとか、そんなくだらない理由で入れ替わったんだとしたら… 有難迷惑だよ、神様仏様。 あたしは人殺しを容認してる訳じゃないけど、自分が生き延びる為には仕方がないからって時代のせいにして、刀を振るう卑怯者に成り下がってしまった。 だからこそ思う。 あたしの存在に助けられたと信じて疑わないこの人は… あたしさえいなければ。 あの場所に皆と一緒にいたのが本物の『平助』だったとしたら… 史実からはとうに消えている、死人だったんだじゃない? これは…とんでもなくマズイ事になっちゃったんじゃないだろうか…
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加