花一匁・其の二

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「…どうすりゃいいっての…」 爪が食い込む程、拳を強く握る。 「どうすんのが正しいのかなんて、わかんないよ!」 あたしの行く道はどこにもない。 目指すモノもない。 夢や希望も。 時間の渦に巻き込まれたまま、この時代で翻弄されながら命からがら生きて、いつかはただ野垂れ死ぬ。 待っているのは、そんなくだらない末路。 かと言って、自暴自棄になってあの連中から離れても、まだまだ無知なあたしが『女』として自立出来るのかと言われれば…今更独りぼっちで生きて行く自信すら無い。 例え、利用されているのだとわかっていても。 ここまで無い無い尽くしの人生だと…未来にいた頃のカラ元気を真似てみても虚しいだけだ。 泣きたい気持ちを抑えるので精一杯になって、後に続く言葉は詰まって出て来なくなった。 そこに…浅い溜息が零れる。 「だったらこれから見つけるしかないね。たった一つの、揺るがない君だけの志しを。」 ……志し? 人を追い詰めるだけ追い詰めといて、いきなり学校の先公みたく小難しい物言いをされても理解に苦しむ。 つーか腹立つ。 「…今度は説教?いい加減にして!あんたにもあいつらにも、振り回されんのはもううんざりなんだよっ!」 堰を切ったように声を荒げると、 「そう、それ。それでいいんじゃない?先ずは周りの意思に流されず、己れの芯を曲げない事。最初から無理をして出来もしない目標を掲げなくていい。君なりのやり方で、少しづつでも歩もうとする姿勢が大切なんだよ。回り道だからこそ見えてくるものもあるし、君にしか出来ない事も必ず見つかる筈さ。…ね?」 伸ばされた手が、あたしの頭をふわりと撫ぜた。
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