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そこには、トロけてしまいそうな程に甘い笑みがある。
まるで…春の木漏れ日みたいに眩しい。
…って、ポエマーかあたしは…気持ち悪っ!
ガラにも無く乙女気分で見惚れていた自分に気付き、胸焼けみたいな不快さを感じた。
「ちょ…いつまで撫でくり回してんのさ!」
正気を取り戻し軽く手を払うと、
「ククッ、しおらしい姿なんてやっぱり君には似合わないね。」
「いだっ!」
やられたらやり返さないと気が済まないらしく、さっきよりは多少加減したデコピン攻撃をしてニヤリと口の端を上げた。
「これから僕は、君を見守る影になってあげる。本当に助けがいる時には…誰より先に僕の名を呼んで?」
…いきなり何言ってんだ、こいつ…
こんな鬼畜に借りを作るなんて冗談じゃない、頼まれても絶対に御免だっちゅーの。
「まさかあんた…これから四六時中、あたしに付いて回る気?それとも素性を隠して、新選組に入隊する気なの?」
つーか、こいつの名前…何だったっけ?
『助けを呼べば、いつでもどこでも駆け付けます』とかブラウン管の向こう側にいる、正義のヒーロー気取りなんだろうか?
…真っ黒黒助のドス黒い腹しやがってからに。
悪態づくのは当然ながら胸の内。
すると、
「馬鹿だね。狗共に面の割れた僕が、君と一緒にいられる訳がないじゃない。忠実でやたらすばしこい鼠も飼ってるようだし………ホラ、噂をすれば何とやらだ。」
男は後方の遥か遠くを指差す。
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