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つられて振り向いた方向に、小さな土煙りが見えて…
それが段々近付くにつれ、わあわあと叫ぶ怒号のようなものまで聞こえて来た。
「あれは…」
「良かったね、無能な仲間じゃ無くて。と言うより、そうじゃなきゃ僕も困るんだけど。実際の所まだまだやる事が多過ぎて、君を今直ぐ嫁に貰うには都合が悪かった訳だし。」
「ーーーー……嫁ぇ!?」
どこまでも自分本位な男は、急に指笛を高く鳴らし放置してた馬を呼び寄せ、素早く跨った。
「僕は…吉田稔麿。刻が満ちたら…今度こそ無理矢理にでも奪いに来るから、その時までには未来の旦那様の名くらいちゃんと覚えておきなよ、お馬鹿さん。」
「はあ!?旦那様ぁ!?ーー頭おっかしいんじゃない!?」
動き出そうとした馬の前に立ち塞がり、両手を広げる。
「ちょっ、待ちなってば!人の事好き勝手馬鹿馬鹿言いやがって超失礼な奴め!あたしにはね、ちゃんと雅っつー名前があんの!!」
「ふぅん…君の真実の名は雅って言うんだ。名は体を表すなんて言うけど…クスッ。」
馬の鼻面が目の前に迫り、少し仰け反った格好のあたしを馬上からジロジロ見下ろして、吉田と名乗ったいけすかないスケベ野郎が小馬鹿にしてもっとニヤつく。
「妙なトコで止めんな!めっちゃ腹立つーー!!」
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