花一匁・其の二

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今迄は緩々やったんかーーい!! なんていつものツッコミが出来ない程、山崎さんを纏う空気が変わった気がしてゾクッとした。 「たりめーよっ!もしあんにゃろうが現れやがったら、今度こそギッタンギッタンにぶちのめしてやるぜ!!」 右拳を握り空へと突き上げ、漢気溢れる決意を雄叫ぶ新八さん…だったけど。 左手がまだ股◯をガードしたまんまってのが、やっぱりカッチョ悪くて。 「ほんなら無事合流出来たトコでそろそろ、再出発しよか。江戸への道程はまだまだ長いさかいな。」 「よっしゃ!雅、俺がおぶってやるっ!」 「…へ?」 テンション高めの新八さんが背を向けてしゃがみ、カモンカモンと手を動かすけれど… あなた、片手を◯間に添えてますよね? これ以上あたしに、どんな生き恥晒せってか? 「絶対ヤダね!死んでもお断りだっつーのっ!」 ここは当然、逃げるが勝ちでしょ! 「そんなツレない事言うなよっ、雅ィィーーー!!」 「ちょ、待てや!そっち逆戻りやっちゃーねんっ!永倉はんもさっきから雅雅て、それ禁句ちゃうんかいっ!!ちったあ考えても物言い、って、あーもう!二人共人の話聞けやーーーーっ!」 結構ヤバい目に遭ったにも関わらず、結果的にはミニコントみたいにドタバタ騒ぎ出す、緊張感のないあたし達って一体… まあ結論を言えば、足の速い山崎さんにあたし達は速攻捕まって…両手首を縄でぐるぐる巻きに縛られ、暫くの間強制連行される形で江戸方面へ向けて歩かされたのだった。 擦れ違う人はギャーギャー騒ぐ様を見て笑ったり、何事かとガン見してきたりで…超恥ずかったけども、唯一の救いは新八さんの手が股◯からやっと離れた事だけ… 「へへ…俺達お揃いな!」 「喜んでる場合かっ!」 「いいじゃねえか、旅の恥は何とやらって言うだろ?」 「これは生き恥っつーんだよ!」 恥だって自覚してんなら、ちょっとは大人しくしててくれ… あたし達の旅は始まったばかりで、先行き不安に前途多難。 この先もかなりの珍道中になるのは間違いないと腹を括りつつ、怖い顔して睨みを効かせる山崎さんに隠れて小さな溜息をついた。
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