雨上がりの午後に

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向かい合わせの席で手を伸ばし、指でホワイトソースを拭う。 「んー…」 反射的に目を閉じ、顎を突き出す仕草をした平助。 気まぐれ猫が急に撫でてくれとせがみ、気持ち良さそうにフニャリと力を抜いた感じに似ている。 「…取れた?」 薄く開いた眼が俺を捉えた瞬間、 ーーードキッーーー 何故だか胸に、変な動悸が走った。 「どしたの?」 …何だ、今の『ドキッ』ってのは…?違うだろ、コイツは男だぞ? 「あ、ああ…取れた取れた。何でもねえから。」 「そ?ありがとね。」 こっちの気も知らないで、平助はまたドリアをがっつき始めた。 …参った…流石双子だけあって、雅に超クリソツ過ぎで… 困ってる奴がいたら助けてやるのは当然だと認識してても、姿形が惚れた女と類似してるとなると無意識に、過剰な接し方になっちまうらしい。 「…お前さ、もし俺が悪い奴だったらどうすんの?」 「は?いきなり何?」 気を許されているのは喜ばしい筈なのに、自分の疚しさからつい意地の悪い質問をしてしまった。 「だからさ、さっきみてえに無防備に目閉じたりして…もし俺がブスッと首刺したり、ドタマカチ割ったりしたらどうするんだって話し。」 平助はキョトンとした後、右手にスプーンを持ったまま頬杖ついた。 「何?平和ボケすんなって説教でも始める訳?」 そしてウザそうな顔をする。 「いや、何となくふと思っただけで…」 「ふぅ~ん…ま、いいけど。」
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