雨上がりの午後に

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もう食べ終えた容器の中を、プラスチックのスプーンがしつこくも忙しなく動いている。 「…蓮司はそういう卑怯な真似、大っ嫌いっしょ?」 スプーン一杯にも満たない、かき集めたちょっぴりのドリアをペロリと舐め、スプーンで俺の顔を指す。 「信用してるよ。〝この時代〟にいる中では誰よりもね。」 「…そりゃどうも。」 ズクッとした、モヤモヤ感。 情けねえ事に、墓穴を掘ったと自覚する。 今の言い回しは、いつか来る別れを前提として一線引かれたんだ。 そのクセ『信用』ってな重い言葉で俺を縛りやがる。 雅が現代に戻れた時の保険として。 こんなに小狡く小賢しくあざとい奴が、伊東甲子太郎には良いように操られる姿なんざ、想像もつかねえぜ。 少しムカついて、 「ま、信用の度合いはかなり差が付くんだろうがな。」 ぶっきら棒に言い、湯飲みを持って立ち上がった。 「…どういう意味さ?」 「そういう意味だろ。」 殆ど口に付けてない中身を流しへ捨て、 「じゃ、用事も済んだし俺帰っから。」 平助の前を通って玄関に行く。 「は?…ちょっ、何?急に怒り出されても訳わかんないんだけど?」
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