雨上がりの午後に

8/25
前へ
/412ページ
次へ
…ガキの喧嘩かよ?しかも幼稚園児並みの。 ツッコミたくなる次元の低いやりとりに、ドッと出て来る疲れ。 多分お互い、でっかい不安を抱え続けた結果…ストレスが溜まりまくってたんだろう。 俺も平助も口は悪りいし捻くれモンだしで時々はこういうくだらない喧嘩に発展したりするが、今回はちとマズイ流れっぽい気がする。 「卑屈になってんじゃねえ。…辛気臭えのは嫌えなんだよ、邪魔したな。」 そう思いながらも、何のフォローもせずに靴を履き傘を握って部屋を出た。 正確には、逃げ出しただけだ。 一時の気休めや励ましでも、上手い事言ってやれねえ不器用な自分から。 そして追って来ない様子に安堵してる俺は、いつからこんな臆病者になったのだろうか。 「…ふぅ…嫌な雨だぜ…」 ここの所ずっと降り続く小雨は、ジメジメと心を湿らせ陰気な気分にさせる。 治った筈の傷ですら、時折疼かせやがるんだ。 見上げた空は曇天。 まるで、すれ違いばかりの今の俺達みてえにどんよりと重苦しい色だった。 今回もきっといつも通り、直ぐに平助から折れてくるだろうと思い込む事で、胸につっかえたままのモヤモヤを誤魔化して、この日はアパートを後にした。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加