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この広い世界中で、どれだけの人間が虐げられて生きているのか。
そんなものは数え上げていたらキリがない。
今も昔も変わらない、大人の身勝手に泣かされるのは子供達だ。
だからこそ、自分が大人になった時そうあるまいと願う。
真に強き者になりたいと。
「平助…」
多少荒くなった息を整える。
「間違えるなよ。おめえはちゃんと、皆に必要とされてただろ?」
「…っ、」
言葉を詰まらせた平助の目に涙が滲む。
「例え親に見捨てられようが住む世界が変わろうが、おめえの存在を認めてくれてる奴らがいるってぇ事を忘れちゃあなんねぇぞ。」
「ぅ…くっ…」
その顔は似て非なる別物。
わかっちゃいるのに、まるで一人ぼっちの雅が泣いてる姿に見えて…やたら胸が騒つく。
「俺の一番は雅であって平助じゃねえ。だが俺も『奴ら』と同じようにおめえの事を、かけがえのない大事なダチだと思ってる。それだけは覚えててくれな。」
震える肩をそっと抱き寄せれば、
「…うん……うん…っ!」
小さく頷き身体の重みを預けて来る。
「なぁに~?痴話喧嘩はもう終わり~?」
「つっまんねえ、もっと修羅場見せろってーの。」
「イチャつくならラブホ行けよ、リア充め。」
ギャラリーの無責任な野次とイタイ視線はさておき、俺の身に降りかかった災難はコレで漸くおさまった。
…かに見えた。
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