嫌よ嫌よも…

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…てゆーかさ… 「あんたっ、」 「おい、ちょいと聞き捨てならねぇな。」 文句とガチカブりしたのは佐之さんで、 「さっきの言いようじゃあ、あんたは平助の『手拭い』が盗まれんのを黙って見てたって事だよな?ヘラヘラ嗤いながらよ。」 「せやなぁ。」 悪びれもしない様子に、結構カチンと来たらしい荒い口調で、 「何でだ?てめえが丹精込めて作ったモンだろ?普通ムカつかねぇか?」 まるで代弁者かのように、あたしが思っていた通りの疑問や不満をぶつけてくれた。 心の中で『そうだそうだ!こうなりゃ、このイケスカニイちゃんに鉄拳制裁食らわしたれ!!』と佐之さんに過激なエールを送るも、 「いんやぁ…別に?」 そこは軽ーく流され、 「あないなモン、作ろ思たら何枚でも直ぐ作れるし。それよりかちんまい事やけど、一個でも伊東の弱味握れたんが思わぬ収穫やん?」 毒を臭わす、アブないお仕事モードの眼に豹変した。 途端にあたしの心臓はドクッと強く脈打つ。 「はあ!?そういう事を言ってんじゃねぇよ!!」 そしてそれが、佐之さんの怒鳴り声でもう一度繰り返し起こる。 「あんた、人をからかって巫山戯んのも大概にしろよ!」 佐之さんが山崎さんの胸ぐらを掴んで壁に背中をぶち当てるのを見て、心拍数は益々跳ね上がった。 「…ワレ何しとんねん、手ぇ離さんかい。」
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