奇跡は突然やって来る。

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「ちょいとこっちこい。髪結ってやる。」 手招きされてちょこんと座ると、左之さんは緑色の細い紐を口にくわえて、あたしの髪を手で梳いた。 「ちょい短けぇのな。いつも平助がしてた髪型にしてやる。…それにしても艶のある髪だな。」 まとめにくいと文句を言われた。 なすがままお任せしていたら、出来上がりはただのポニーテール。 左之さんは短髪だけど後ろ髪が犬の尻尾だし、新八さんも雑だけど普通の短髪で、そう言えばここの人達も丁髷の人は半分もいなかったような気がする。 武士っていうのもイロイロなのかなーって思ってたら、急に腰の帯のとこに刀を二本突っ込まれた。 「え!?重っ!じゃなくて、あたし刀なんて使えないよ!?」 重心が左に寄って帯がズレたけど、そんなんどうでも良くて。 まさか本物の刀を持たされるとこまで考えてなかったから、本気で焦ってしまった。 「一応挿しとけ。丸腰だと不信がられるだろ。」 「でも…使えないよ?あたしはもっぱら木刀派で…。」 「木刀?なんだ雅、剣術習ってたのか?」 「あー、いやー、そのー、喧嘩で…少々…。」 自慢にならない苦い過去の経歴だ。 、
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