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焦りは…いつだってある。
もっと強くなりたい。
馬鹿にされたくない。
お荷物になりたくない。
そしてほんの少しだけ、ずっと女だとバレなきゃいいなって。
そこまで考えた時…肝心なところが抜けている自分自身に青ざめる。
あれ?一番大事なのは無事に未来へ帰ること、じゃなかったっけ?
この場所で生きていく覚悟なんてサラサラ無いのに…筋肉隆々の男共とマトモに張り合おうだなんて、実はあたしってば頭おかしくなってんじゃないの?
元の時代に帰りたい。
それを目標としてあんなにも切々と願っていたのに、今のあたしはこの人達らに対して情にほだされてる感じがして…別れが寂しいとか離れたくないって流されそうな気がして、何だか怖くなってくる。
『あたしがこのまま、藤堂平助として生きていくとしたら』
楽しい事より辛いことの方が多いこの時代。
殺し合いは日常茶飯事で、病気や怪我をしても未来の医学なら治るのに、ここでは簡単に命を落とす。
気合いと気持ちだけでは、現実的に生きていけないんだ。
改めて…甘っちょろい考えの自分に嫌気がさした。
「…勉強…」
「?」
「斉藤さんの言う通りにさ、やっぱ勉強しとこうかな…」
「…べんきょう?」
「えーっと…あた、じゃない、俺もちゃんと学び直そうかなって…」
「は?いきなり何でまた…」
「おめえがいっとうゴネてたくせによ。」
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