嫌よ嫌よも…

19/37
前へ
/412ページ
次へ
焦りは…いつだってある。 もっと強くなりたい。 馬鹿にされたくない。 お荷物になりたくない。 そしてほんの少しだけ、ずっと女だとバレなきゃいいなって。 そこまで考えた時…肝心なところが抜けている自分自身に青ざめる。 あれ?一番大事なのは無事に未来へ帰ること、じゃなかったっけ? この場所で生きていく覚悟なんてサラサラ無いのに…筋肉隆々の男共とマトモに張り合おうだなんて、実はあたしってば頭おかしくなってんじゃないの? 元の時代に帰りたい。 それを目標としてあんなにも切々と願っていたのに、今のあたしはこの人達らに対して情にほだされてる感じがして…別れが寂しいとか離れたくないって流されそうな気がして、何だか怖くなってくる。 『あたしがこのまま、藤堂平助として生きていくとしたら』 楽しい事より辛いことの方が多いこの時代。 殺し合いは日常茶飯事で、病気や怪我をしても未来の医学なら治るのに、ここでは簡単に命を落とす。 気合いと気持ちだけでは、現実的に生きていけないんだ。 改めて…甘っちょろい考えの自分に嫌気がさした。 「…勉強…」 「?」 「斉藤さんの言う通りにさ、やっぱ勉強しとこうかな…」 「…べんきょう?」 「えーっと…あた、じゃない、俺もちゃんと学び直そうかなって…」 「は?いきなり何でまた…」 「おめえがいっとうゴネてたくせによ。」
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加