奇跡は突然やって来る。

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やさぐれてたあたしはしょっちゅう喧嘩に明け暮れた。 複数の相手の時には木刀片手に暴れまくって、変なあだ名までつけられてたっけ。 だけど、それはこの人達がやっている事に比べたら、赤ん坊の小突き合いと同じだと思う。 「喧嘩ね…雅はお転婆だったんだなぁ?か弱いんじゃなかったか?」 「う…。」 ニヤニヤ笑われるとムカつくよりも、自分の失言が恥ずかしい。 そっぽを向くと左之さんが、ポンと頭を軽く撫でた。 「多分な、そろそろ俺らの召集がかかるぞ。お前は余計な事は喋るなよ。それが終わったら信用の置けるモンにだけ、お前と平助の事を話そうと思う。お前がここで生き延びる為には、協力者が不可欠だからな。」 騒がしかった部屋の外は幾らか落ち着いたらしく、怒鳴り声はもう聞こえなかった。 「…大丈夫なのかな?あたし髪の毛、茶色いままだし…実は化粧も少ししてて…。」 「髪はこれが地毛だって正直に言やぁいい。化粧は…してんのか?わかんねぇぞ。」 頬っぺたをぐいぐい擦られて左之さんが親指を見せたけど、どうやら池田屋の騒動と蒸せるような熱さで、申し訳程度の化粧はアッサリと落ちていたみたいだ。 「あ、ホントだ。後、あたし」 「『あたし』じゃねぇって言ったろ?」 遮ったのは長くて太い指で、それが唇にピタッとくっつく。 、
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