嫌よ嫌よも…

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恋愛感情が有るでなし、記憶までも無いまま処女喪失する運命だったなんて…チクショー。 「…てか、畜生はコイツじゃん…」 寝込みを襲うなんてクズだよ、男のクズ。 「…この怨み、晴らさでおくべきか…」 世が世なら強姦罪で刑務所にブチ込めるところなのに、悲しきかなここは江戸時代。 色んな意味で無知なあたしが、どうやって訴えれば良いというのか。 仕方ない…こうなりゃ眼が覚める前に、どうにか自力で復讐してやろ… 前髪パッツンにしたろうか。 それとも麻呂眉にしちゃろうか。 でもなぁ、髪も眉毛も後から生えてくるしなぁ…一生モンを失ったあたしと同じに、ずっと背負って貰わないとワリに合わん気がする。 失って困る一生モン…うーん… 何が良いかと悩みに悩み抜き、このイケ好かない無駄に整った顔を見つめ続けピンと閃いた。 それは、この不便な時代だからこそ治せないモノ。 「よし、取り敢えず前歯ブチ折っとくか。」 「…寝起きで何恐ろしいこと吐かしとんねん。」 「ヒッ…!?」 静かに上体を起こし、山崎さんの顔の前で右手の拳を握った途端に、ゆっくりと開いた眼は軽蔑の眼差しで。 「あは、あははは~」 その手をパッと広げ、頭の後ろを掻く振りをした。
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