奇跡は突然やって来る。

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この人はなんでこう…一々気障なんだ…。 ちょっとドギマギ照れながら、 「お、俺。」 と言ったら、 「良く出来ました。」 って、親指を立てて褒めてくれた。 甘い笑顔はやめて欲しい…なんかムズ痒いんだよね。 その後あたしの脱いだ服を一旦押し入れの中に隠したり、『平助』って人の私物を見せて貰ったりしてた。 服は血がいっぱいついたままだけど…今は仕方ない。 そしてついに… 「失礼します。お疲れのところ申し訳ありません。組長の方々は副長室へ集まるようにとの事です。」 左之さんの言う通り、あたし達にお呼びがかかった。 「わかった、直ぐに行く。…おい新八っつぁん、お呼びだぜ。」 「ぐえっ!」 間髪容れず返事をした左之さんは、気絶中の新八さんのお尻に足を乗せて踏み潰した。 目を覚ました新八さんは起き上がると頭を振って、お花畑に綺麗な天女様が何人もいる夢を見たって言う。 こんな時なのにどこまで幸せな人なんだ…。 軽蔑の眼差しを送る中、袴までしっかり履いた新八さんは、 「下手こくなよ。」 そう言って片眉を上げてあたしを見る。 「…上等、やったろうじゃないの。」 「おっ、いいねぇ。そうこなくっちゃな。」 「さすが平助。」 思いっきり強がりだけど両手で頬をパチンと叩き、気持ちを引き締め直した。 これからいつ終わりが来るとも知れない時代で、あたしは覚悟を決めて生きて行くしかない。 足掻いてやる。 生き延びてやるんだ。 元いた世界に未練なんてないけれど、理不尽に殺されるのも真っ平ごめんだから。 あたしと『平助』って人が生きて願い続ける限り、いつか必ず[その日]が来る事と信じて、今は見えない道をただ懸命に歩いてゆくだけ。 先に廊下に出た二人に見守られ、早くなる鼓動に手をあてゆっくりと深呼吸してから、新しい一歩を踏み出した。 、
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