嫌よ嫌よも…

37/37
前へ
/412ページ
次へ
人の身体に乗っかったまま、息を殺して大爆笑してなさる。 「んぎやあはひふーーっ、やて…っ!…ぶふっ、あはは…!!」 「…んにゃ…ビミョーに違う気がする…」 最大級の醜態を晒した訳だけども、そこはちょい気になって一応ツッコミを入れておく。 布団の中で必死に声を殺して笑う山崎さんは、全身の力が入らない感じで全体重をあたしに預けていた。 「…ちょっとさー…いい加減重いんだけど?」 山崎さんが笑う度に振動が直で伝わって来て、益々居た堪れない。 両手でグッと押し返すと、涙目で緩みきった顔が見えた。 「あー…ワロタわぁ~……自分ホンマ、オモロうてめっちゃ好っきゃわぁ~」 いつもと違う柔らかな微笑みは、言葉と同じにドキリと胸を跳ねさせる。 のも、束の間。 「…せやしホンマは、危ない目ぇに遭わせとうないんやけどな…」 真剣な眼差しであたしを見ていた。 ドキッとしたのは不意打ちの色香のせい、だと思うことにして… ゴクリ、と息を飲んだと同時に、 「…斎藤はんはこれから暫くあいつらと一緒や。つまり…あいつらが何企んどるのか証拠を掴まん限り『何があっても』戻って来ることはあらへん。例え、俺らと敵対することになってもうてもな。」 山崎さんの言う斎藤さんに与えられた任務が、どれ程過酷なものかを思い知らされた。
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加