獣(ケダモノ)の住み家

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「…おめぇ、平助じゃねぇだろ。」 先に口を開いたのは土方さん…ちょっと睨まれた。 「いやしかしだな。それ以外は、まんま藤堂君じゃないか?」 近藤さんて人は目を丸めている。 「実は元々女子だったのを偽っていた…とか。」 これは斎藤さん。 「いえ、それはないでしょう。平助君の裸は見た事ありますし。」 「じゃあいきなり、女体に変化したと言うのかい?」 眼鏡をかけたサラサラストレートヘアの人と、優しそうな丁髷のおじさんは、珍しいモノを見る顔であたしを眺めてた。 次々と自分達だけで話されると、割り込んで説明をする隙間がない。 その時静かに障子が開いて、門で出迎えてくれた人が総司さんを支えて入って来た。 「総司、もう動いて平気なのか?」 近藤さんが声をかけると、 「大丈夫ですよ。皆さん大袈裟なんだから。」 まだ少し赤い顔で、笑って平気な振りをしていた。 総司さんは近くに来て、壁に寄りかかながら腰を下ろすと、胡座を組んだ足をポンポンと叩く。 「平助、おいで。」 あたしに向かって微笑みながら、犬のように呼びつけられた。 …この場合、ワンと鳴いて行くべきなのか? さも当然のように、待ってらっしゃいますが…。 困ってまわりの皆をキョロキョロ見たら、こっちはこっちで異様な事になっていた。 、
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