獣(ケダモノ)の住み家

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「こっち来い。」 「いいや、俺だ。」 「俺の膝に来い。」 「平助君、来なさい。」 「…来てくれ。」 「組長、どうぞ。」 近藤さんと丁髷のおじさん二人以外は、皆自分の膝を叩いてオススメしてくる。 門の人まで!? いくらあたしが女だからって、この扱い方はおかし過ぎだと思う。 まさか…『平助』って人…ペット扱いされてたんじゃ…。 身の上を話す前から、さっきの決意表明を瞬時に撤回したくなってきた。 不安と後悔でいっぱいになった時、 「…って冗談はさておき…どういう事か俺達が納得いくように、説明してもらおうか。」 救いの神、土方さんの一言で膝抱っこ争奪戦は、あっさりと終わりを告げた。 「あははー、なあんだ冗談かぁー。」 コイツら純情乙女をからかいおって……いつか絶対シバく!! 感情のない乾いた声を出して、怒りゲージMAXを辛うじて抑えていると、 「あれ?私は冗談じゃないですよ?」 「あぎゃ!?」 後ろ衿を掴まれ倒れたとこを、更に両脇へ手を入れて引き、総司さんの膝の上に納まった。 身長が高い人だから、あたしの身体はすっぽりと包み込まれてしまう。 「さて話しを聞きましょうか?」 突き刺さる視線は気にならないのか、頭の上から聞こえる声は何故か弾んでいるように聴こえた。
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