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そしてこの話しは一旦お終いになった。
自分達だけいつまでもコソコソとやっていたら、他の組長さん達に勘繰られてしまうからって話しだった。
そこであたしは思い切って土方さんに相談があると持ち掛け、部屋に残るとごねる男共を追い出して、今ようやく副長室に二人っきりになれた。
どちらにせよ人の出入りがあったり書く物があるとかで、今日だけは部屋を譲るのは無理だから、土方さんも残る予定だったらしいんだけど。
「…で、相談ってのは?」
人払いをしたのに緊張して畏まっていると、机の上で墨を摩る音が聞こえる。
「あの、忙しいのにごめんなさい。」
仕事の邪魔をしているようで申し訳ない気持ちになって広い背中に謝ると、長い髪が揺れてこっちに振り向いた。
「気にすんなよ。確かに今は忙しいが、お前と平助に起こった事に比べりゃ、大したこっちゃねぇ。いきなりこんな所に来ちまって、お前もこれから何かと気苦労も多いだろうな。だが俺達に出来る事は何でもしてやるつもりだ。遠慮なんかすんじゃねぇぞ?」
さっきまでの表情と違って、親しみやすい柔らかな笑みが零れて、おかしな感じだけどドキドキしながらホッとするあたし。
肩の力が抜けたのを見計らってたみたいに、土方さんはコイコイって手を動かした。
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