奇跡は突然やって来る。

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ゆらゆら…ゆらゆら… 温いお湯に漂って…? なんだろ…この感じ。 気持ちいいなぁ。 『死ぬ』ってこんなにゆったり居心地が良いもん? 恐くないんだ。 『恐いよ』 痛くもない。 『痛いよ』 どこからか思いもしない真逆の言葉が、あたしの後から勝手に返事をしていた。 誰なの? 『君は誰?』 あたしは… 『俺は…』 もうひとつの存在と形が無くても、重なり交わる感覚。 そして… 哀しくも懐かしくもある温もり。 だけど相手を確かめる間もなく、違う方向へと引き寄せられる。 どこへ行くの? 『……待って……』 あたしは… 『……君、は…っ』 差し出す手もないまま、声の主は遠く消えてしまった事を知る。 それからは、ただ落ちて行くだけだった。 、
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