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身嗜みを整えてから、
「終わったよ。」
と声をかけると山崎さんが水の汚れを見て、
「明日はお風呂に入れるようにしますね。…ところでお腹空きませんか?良かったら握り飯とお茶をお持ちしますよ。」
執事並の気遣いをしてくれた。
握り飯と言われて晩御飯を食べていなかった事に気付いた途端、腹の虫があたしの代わりに返事をして、
「フフ…持ってきますね。」
笑われてしまった。
「副長はどうされます?」
「おう、持って来てくれ。」
いつの間にか机で何かを書き始めた土方さんは、作業をしたままキセルをくわえて吹かしていた。
山崎さんが廊下に出ると何人かの話し声がして、そのまま一緒に消えて行った。
多分覗きの犯人達だ。
静かな部屋にサラサラと筆が滑る音だけがして、暇なあたしは土方さんが何を書いてるのか、見てみたくなった。
そっと覗き込むと…
…解んないし。これって習字の先生とかが書く、昔の漢字を崩してるやつじゃない?漢文…だったっけ?
ミミズみたいに黒い線がフニャフニャ並んでて…例えばそれが機密事項であたしがスパイだとしても、全く読めないから意味がないよね。
「何を唸ってるんだ?」
知らず知らず難し過ぎて声を漏らしてたみたい。
筆を走らせたまま聞いてきたけど、廊下から足音がして土方さんの動きが止まった。
「誰か来たぞ、胡座組んで座れ。」
小さく低い声で言ったから、あたしの事を知らない他の誰かだと思う。
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