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「副長、いらっしゃいますか?」
やっぱり聞いた事のない声だ。
「おう、報告か?」
「はい、重傷者二名の手当てが終わりました。」
「わかった、入れ。」
「失礼します。」
障子が開いてから、まずあたしを見て、
「藤堂組長いらっしゃったんですか。…よろしいので?」
驚いたのはきっと、あたしの髪の色のせいじゃなかろうか。
「かまわねぇよ。…で、容態はどうだ?」
それでも土方さんが平然としてるから、その人も何も言い出せなかったみたい。
「は、医者が言うには二名共に傷は深く、出血は止まりましたが縫い口が塞がらぬ事には何とも…。」
「先ずはそこだな。腐らねぇといいんだが…。」
腐る!?か、化膿の事だよね?
今話してるのは沖田さんから離れたとこで、板に乗せられていた人達の事に違いなかった。
満足に治療の出来ないこの時代で、あんなに大きく斬られて大量出血してたんだ。
傷だけを縫い合わせても細菌を殺す抗生剤がないんじゃ、感染症を引き起こして助からないんじゃないんだろうか。
医学の知識が無くても、それくらいならあたしにもわかる。
「奥沢は即死…か。」
「…はい。」
「苦しまずに逝けたんならそれでいい。…遺体は腐らねぇように安置しとけ。それと安藤と新田には、暫く付き添いをつけろ。」
「心得ました。」
「後…明日も残党狩りをやる。皆に伝えておけ。」
「はい。…それではこれにて失礼します。…藤堂組長も、お話し中失礼しました。」
「あ、いえ。」
いきなり話しかけられてお辞儀されちゃったから、つい一緒になって頭を下げた。
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