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「…ねぇ、普通のお米って」
「あー今日の分は全部握ってあったからなぁ。」
「さいですか…。」
泣く泣くしょっぱいおにぎりをちょっぴりずつ食べていると、隣の左之さんが自分の食べかけのおにぎりを指差して、
「ここ、食べてみ。しょっぱくねぇから。」
と、あたしの口に近付ける。
歪(イビツ)な形のおにぎりは、明らかに外側の部分をかじったものだ。
お腹の虫はまだグルグルと鳴くし、善意の笑顔は向けられるし…背に腹は替えられない。
無言で口に含んだ米は、いい感じに塩が染みてて、噛めば噛むほど甘味が出てきた。
「…美味しい!」
米自体はモチモチしてたから、きっとしょっぱくさえなければ、美味しいだろうとは思ってたけど…ここまでとは。
この時代だとお釜とかで炊いてるだろうな~。
「そうか、良かったな。もっと食うだろ?」
「うん、これなら食べれるよ。」
「ほら、その握りも寄越しな。」
幼児のようで情けないけど、今だけの事だし…まぁいっかな。
皆のイタい視線を浴びながら、左之さんが外側をかじってあたしが中を食べていた。
「左之さんばっかりズルイですよ。ほら平助、こっちもどうぞ。」
何がズルイのかはわからないけど、総司さんが言い出した途端、真似をする馬鹿共が増えた。
「…そんなにいらないから。」
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