獣(ケダモノ)の住み家

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遅い晩御飯の後は、新八さんが持ってきてたお酒で宴会…という訳にはいかず、皆追い出されてた。 土方さんは仕事の続きを始めて、あたしは用意してあった布団に潜る。 「おやすみなさい。」 「ああ、ゆっくり休め。」 机に向かったまま返事をする姿は、衝立に遮られて見えなかった。 ただ紙の上を滑る筆の音と…近くの部屋の話し声や笑い声が、大きくなった時だけ聞こえた。 仲間が死んだのに、よく笑っていられるもんだ。 時々誰かが入ってきてたけど、土方さんが小声で話すもんだから、相手の人もつられて小さな声で喋ってた。 あたしに気を使ってるんだろうな…。 せっかくの心遣いも、無用のものなんだけどね。 疲れてはいても自分の身に起きた不思議な出来事を思い出すと、おちおち眠っていられない。 目まぐるしい変化に、精神がまだ興奮しているんだ。 やっと自分だけの時間が持てた事だし、ゆっくりと考えてみよう。 …まず事故の事。 あの時一緒に事故に遭った、蓮司はどうなったのか? 酷い怪我をしたりとか、最悪死んでたりなんてしてない事を祈る。 けれどもし、あたしみたいに遠い過去…或いは未来の何処かへ、飛ばされているとしたら…。 蓮司は強いけど、いきなり戦争とか危険な場所だったりしたら、相当マズイ。 …そう、今のあたしのように。 、
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