獣(ケダモノ)の住み家

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神様。 あたし今まで信じてなかったし祈った事もないけれど、人生初のお願いを聴いて下さい。 朝になったら… 目が覚めたら元の世界に戻れていますように。 出来れば…あんまり酷い怪我をしてない状態で。 この後も付属で沢山願い事を告げて、寝返りを何度もうちながら溜息ばかりをついていた。 「眠れねぇのか。」 そうこうしていると、いつまでもモゾモゾ動くあたしが気になったのか、土方さんが小さく声をかけてきた。 「…うん、なんか目が冴えちゃって。」 「そうか。ま、仕方ねぇやな。…少し話すか?」 「いいの?邪魔じゃない?」 「休憩だ。気にすんな。」 カタリと筆を置いたであろう音が聞こえて、あたしも布団を剥いで衝立から顔を出してみた。 すると自分が敷いていた座布団を外して横に起き、そこを叩いてあたしを手招きしている。 「…ありがとう。」 喋り方はべらんめえ口調で乱暴なのに、こういうトコ優しいんだよなぁ。 一度正座で座りかけて胡座に変えたら、 「そうやって癖つけとけよ。畏まって座んのは、道場とお偉いさんの前だけだからな。」 そう言って、にやりと笑って見せた。 、
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