獣(ケダモノ)の住み家

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「…あんまり心配してないみたいだね。『平助』って人が無事でいるのか解らないし、本当にあたしのいたとこに飛ばされたとは限らないのに。」 こんなおかしな出来事を最初から全て受け入れて、あたしを責めるで無し調べるでも無し、何で落ち着いていられるのか不思議でならない。 土方さんは腕組みをしてからちょっとだけ考えてる風だったけど、すぐにあたしを見て言った。 「心配してねぇ訳じゃねぇよ。ただな…根拠はねぇが、お前が俺達の傍に現れたように平助の傍にもお前の仲間がいて、助けてくれてんじゃねぇかなって思えるんだ。」 …どんだけお気楽なんだ。 あたしの仲間って呼べる人なんて、同じ施設出身の蓮司と…京子に尚春(ナオハル)くらいのもんなのに。 でももし本当に『平助』が皆の近くに現れていたのなら、事情が解らなくても助けてあげて欲しいと思う。 「…そうだったらいいけど。」 「信じておけばいい。そうでないと苦しくていつまでもしんどいだろう。お前はまず、此処で生きる事だけ考えろ。何かを成そうとする強い想いが、明日へ繋がる糧となる…ってな。」 「なにそれ、クッサい。」 「臭い?」 また通じてなくて、鼻をひくつかせながら自分の身体の匂いをかいでいる。 外見とギャップのある反応する人だなぁ…面白いって言うか、可愛い人だ。 、
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