獣(ケダモノ)の住み家

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あたしは『平助』を引き受けたけど、本当の『平助』じゃない。 いつ戻れるかもわからないまま『平助』の隙間を埋めるだけの異端な存在。 そんなあたしが史実を変えていい訳がない。 下手したら徳川が15代から先に続いて、明治も失くなってあたしの居た場所すら消えてしまうかも…。 これまでそんな事すら考えてなかったから、自分自身が未来を脅かすとんでもない、秘密兵器並の存在だと悟り恐ろしくなった。 あたしは… 未来の人達の命を左右する危険な人物。 それは絶対に侵してはいけない領域。 でも何で先のないこの人達のとこへ飛ばされたの? どのくらい後か知らないけど、幕府は必ず負ける。 その間…何度も戦争をするんだろうな。 死ぬ目にあったらまた奇跡が起こって現代に帰れるかもなんて、やっぱり甘いんじゃないかと思う。 あたしがこっちで何度死にそうになっても、未来に行った『平助』は… …やめとこ。 さっきの繰り返しになるだけじゃん…。 もしかしたら『平助』の寿命をあたしが全うして、ここで終わっちゃうのかも。 神様よ。 あなたは何の目論みがあって、あたし達を入れ換えたのですか? 「はあぁぁぁー…ヘコむわぁぁ…」 脱力感に襲われて、横隣の机にうなだれて突っ伏した。 、
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