君の面影

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そして、 「これは父上から聞いたんだけど…」 遠い目をして窓の外を見つめると、哀しみを帯びたような顔をした。 「母上は瀕死の状態で突然現れたそうなんだ。父上は異端者だとわかっていて、回復するまでと手元に置いて面倒見てたらしいんだけど…でも時が経って二人は結ばれて俺達が産まれた。父上はね、いつか失うかも知れないっていつも怯えながら暮らしてたって。そしてその日がやって来て、母上は雅と一緒に消えてしまった。まだ俺が物心つく前の話しだよ。」 思い出にも残らなかった別れを知らされた時、どうしても逢いたいと願ったらしい。 母と妹を探して探して、毎日探し続けて… ある雨の日、足を滑らせ山中の崖から落ちた。 そしてそれが、平助の初めての「刻渡り」となったという。 行き着いた場所は留守をしていた妹の部屋。 雅は同じ顔に驚きながらも、笑顔で受け入れた。 一度味を占めれば、何度も何度も歯止めなく繰り返すのが子供だ。 親の目を盗んでは死ぬ目に合いながら「刻渡り」をしている内に欲が膨れ上がり、雅を自分の時代へ連れて帰りたくなったと言う。 「俺が出来るんだから、雅も当然出来るもんだと思ってたし、母上が雅を連れて飛んだんじゃないかって仮説も立てたんだ。いざとなれば俺が雅を連れてけばいいって、単純に考えてた。だけど…」 拳が握りしめられ、唇を噛み締めていた。 、
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