君の面影

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帰る道すがら、 「…母上は雅を置いて何処に行ったのかな…?」 平助は肩を落としていた。 雅に関わる情報は全て伝えてある。 一人暮らしの部屋を見て、改めて侘しさを感じたのかも知れない。 失踪から10年… 今だ何の連絡も手がかりもないようだ。 俺の両親は他界してるから泣くだけ泣いて諦めもついた。 しかし雅の場合、幼い頃置き去りにされ生死もわからない中途半端な別離で、傷つき、気を病んでしまった。 初めて雅と会った時…あいつはガリガリにやせ細り、濁った眼をしていた。 まるで信じる事や期待する事を止めたように。 拒食症にまで陥った雅が標準近くに戻ったのは、孤児院と病院を往復して2年も経ってからだ。 もし母親が自分の『力』をちゃんと雅に教えていたなら… きっと子供なりに違う考え方を持てたんじゃないかとも思う。 実際、平助は母親の失踪を聞いてタイムスリップだと信じて疑わない。 『捨てられた』 『死んだ』 という最悪な結末にたどり着く手前で、 『何かが起こった』 『もしかして』 と、淡い期待であっても幼い雅が精神異常をきたす事は回避出来ただろう。 、
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