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「わ、ナツさん自らチケット係なんて、どうしたんですかー?」  黄色い声が聞こえてくる。  入り口に立っている青年は、ブラウンの髪の毛をさらりとかきあげふわりと笑った。途端、花が咲いたかのように空気が華やぐ。 「小さい劇団ですからね。  いつも、人手不足なんですよ」 「えー、そんなこといっても、なかなか野良猫には入れないって噂ですよー」  顔見知りなのだろうか、お洒落な女の子が嬉しそうに【ナツさん】を見上げている。 「噂なんて、簡単に信じない方がいいですよ。  さぁ、そろそろ中に入ってくださいね。  長話をして、お客様の入りが遅れた、なんてことになったらうちの主役が機嫌を損ねてしまいますから」 「確かに。  ヒョウ様、怒ると怖そうーっ」  じゃね、と、ひらりと手を振って女性は中へと入って行った。  今度は、血相を変えたスタッフと思(おぼ)しき人が走ってきた。 「ナツキさん。  主宰がまだ来ないんですけどっ」 「そう。珍しいね」  言うと、彼は私に目を向けた。  テレビで見たことのある若手人気俳優を髣髴とさせる甘いマスクを持つその人の、ややブラウンの瞳に見つめられて、ドキリと心臓が跳ねる。 ――東京って、こんなにイケメンがぞろぞろいる街なの? そうなの?
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