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「アレルギーおよび好き嫌いは?」  言いながら、豹さんはまた歩き出す。  きっと、私が途中で彼を見失ったらそれはそれで構わないと思っているんだろう。  彼の背中を見ていると、そういう風にしか思えなかったんだけど、ここまで来たら私もなんだか離れがたくてついその背中を追ってしまう。 「アレルギーはないです。  好き嫌いは……多少ありますけど、絶対に食べれないものはほとんどないです。  強いて言えば酢豚のパイナップルとか、生ハムにまかれたメロンとか、そういうのは苦手です。  あ、ショートケーキのイチゴは全く問題ないですよ」 「こんな時間からケーキ作って食べようっておもわねーだろ、絶対」  豹さんは前を向いたまま、少し面白そうにぼそりと呟き、慣れた足取りで24時間営業のスーパーに入ると、当たり前のように私にかごを持たせて、ぽんぽんと食材を放り込んでいく。  そして、財布を出そうとした私より早くカードを出し、さっさと支払いまで済ませてしまった。  気づけば、スーパーの袋を私が持ったまま、豹さんの家へとついてしまった。  とあるマンションの五階が豹さんの住まいのようだった。  モノトーンを基調とした落ち着いたリビングは、整然としていながらも生活感が漂っている。  灰皿に残っている煙草の灰や、片付けられてない猫の餌なんかが―― 「――あの、唐突にお邪魔してすみません」 「昨日からマドンナが行方不明なんだよね」  言いながら、豹さんは手を付けられてない猫の餌を手に取った。 「だから、そのスペースでアンタを飼ってあげてもいい」  耳に心地よい魅惑的な低い声で、なんでそんな冷たいことが言えるのかしら。
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