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「あのね、言っときますけど私は玩具でもペットでもなく、れっきとした女子高生ですっ」
スーツの上着を脱ぎ、ハンガーにかけていた豹さんはその言葉に一瞬目を丸くした。
「――サバ読んでる?」
本気で疑っているのかしら。失礼しちゃうわ。
「事実です。
あ、でも――家出てきちゃったから、もう学校にも行けない、か」
そうだった。
「帰ればいいだろ」
スーパーの袋から手際よく野菜や肉を取り出し調理をはじめながら豹さんは言う。
私はどうしたらいいかわからなくて、彼の背中のさらに後ろで立ち尽くしていた。
「――帰る気は、ないんです」
「あのね。
どんな家だか知らないけど、新宿のど真ん中でヤバい男に浚われるよりもっと危険な場所なわけ? ナナの家は」
「――ナナ?」
首を傾げる私に、豹さんは一瞬振り向いてまた、唇の端を歪めた笑みを見せた。
「名無しのナナ。
名前ないと不便だし。
あ、タマとかミケのが良かった?」
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