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「私の名前は、み……」 「ぼっと突っ立ってるなら、ちょっとそこの丼にご飯よそって。  自分が食べれる量くらい、わかるだろ?  俺は飲むからご飯はパス」  よろしく、と豹さんが言うので、私はすでに途中まで出してあった丼に、土鍋で炊き上げたご飯をついだ。  灰皿を片付けたローテーブルに、出来立ての食事が並ぶ。  親子丼に、根菜がたっぷり入ったお味噌汁。  きんぴらごぼうと、グリーンサラダに、ホッケ。 「冷める前にどうぞ」 「いただきます」  口にした料理は、どれもこの無愛想な人が作ったとは思えないほどおいしかった。 「――すっごく美味しいです」 「そりゃどうも」  おかずを肴にハイボールを飲んでいた豹さんは、照れ隠しなのか、視線をそらしてそういった。  自炊されてるんですか、と、聞こうとして私はそもそも彼の名前さえ聞いてないことに気が付いた。 ――豹さん、っていうんで間違いないよね?  しかし、皆から「ひょうさま」なんて慕われている人を、いきなり「さん」づけしてよんでもいいものかしら――。
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