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 言った後にハッとした。  だって、出会ったばっかりだし、お互い何も知らないのに――。 「まぁ、無鉄砲なアンタは困ることなんてないんだろうな」 「無鉄砲ってそんな――」 「じゃあ、無計画?  俺に拾われなかったら、今頃どうなってたと思う?」 「感謝はします――けど。  大丈夫なんです、絶対に」 「は?」 「私はラッキーガールだから、絶対に大丈夫なんですっ」  自信満々の私に、豹さんは呆れたようにくしゃりと自分の黒髪をかき混ぜた。 「馬鹿もそこまでくると、大したもんだな」  尊大な口調にカチンときた。 「――何も知らないくせに、なんでそんなこと言うんですか」  ヒステリックに言うと、一瞬の後に豹さんは私の目の前に来ていた。  相変わらずのポーカーフェイス。  近くで見ても陶器みたいに綺麗な肌。嗅ぎなれないアルコールの匂いが鼻につく。  触れそうなくらいぎりぎりに近づく紅い唇。  大きな手は私の頭を固定して離さない。  目の前にある黒い瞳の中に、怯えた顔の私が映っていた。
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