1832人が本棚に入れています
本棚に追加
とりあえず、夜寝るところを探さなきゃ。
私は店を後にして、きょろきょろしながら大きな街をあてもなく彷徨っていた。
「ねぇ、おねーちゃん、一人?
良い仕事紹介しよっか」
ただホテルを探して歩いているだけなのに、スーツを着崩した男が、にやにやと詰め寄ってくる。タバコと酒の匂いが鼻についた。
じゃらじゃらと胸元を飾るゴールドのネックレスが、やけに下品に見えた。
「っと……ううん。間に合ってます」
私はちょっと後ずさりながら、小さな声でそう言う。
「そ?
じゃ、お金使える楽しいところに連れてってやるよ」
にやりと笑うと、ぐいと強い力で手を掴まれた。
「――やっ。
結構です」
精いっぱい張り上げたはずの声は、情けないほどに震えていた。
「遠慮しないでこいよ。
折角俺が――」
最初のコメントを投稿しよう!