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大陸が乱れている。
次々に入ってくる情報。変わっていく各地の戦況。
大陸地図を見ながら、貫(かん)州の太守、香京(かきょう)は、今後の方針を考えていた。
慶王朝がまだ正常に機能していた頃、莫大な金を費やして完成させたと言われる大陸地図。
香京は地図の左端に指を伸ばす。
「呈(てい)州は取った」
右下へ。
「煉州軍はすでに英(えい)州に入った」
また左。
「情(じょう)州軍は汕(さん)州に進撃した」
再び右。
「風(ふう)州も反乱の戦力を整えている」
香京は振り返った。貫州の頭脳、沛黄(はいこう)が立っていた。
「我らもそろそろ動くべきであろう」
「はい、空気もだいぶ暖かくなりました。これからの季節なら、兵士も戦いやすいかと」
呈州を制圧してから時間が経ち、今は四月の下旬にさしかかろうとしている。
「進撃の際は、私が指揮をとるつもりでいる」
「承知いたしております」
沛黄は頭を下げた。彼は貧しい農村の出で、幼い頃は母親から暴力を受けていた。右頬に黒い痣がいまだに残っている。そんな沛黄も、今では貫州になくてはならない存在になっている。
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