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「兵はどの程度集まりそうであるか」
「貫州の兵が十万と五〇〇〇。呈州から七万と三〇〇〇というところでしょうか」
「十八万。よい、充分である」
「しかし、油断は禁物かと。官軍は弱体化しているとはいえ、依然として百万近い戦力を維持しておりますゆえ」
「分かっている。警戒するのはやはり雷紹(らいしょう)であるな。官軍第二軍の」
「はい。ことに参謀の関周(かんしゅう)は稀代の策略家と名高い男。関周一人のために、情州軍の進撃が遅れております」
「だが、こちらにもお主がいる」
沛黄は返事をせず黙る。長いつきあいで気づいたことだが、沛黄は良く人を誉める。しかも誉め方が上手く、相手のやる気を引き出させる。
そんな能力がありながら、自分が誉められることにはてんで慣れていないのだ。誉められると動揺し、口を閉ざす。そこだけはまだ幼いな、と香京は思う。
「しかし、呈州を先に落としたのは正解であったな」
沈黙を続けられても困るので、話を変える。
薄暗い政務室。窓から差し込む夕日は、もうだいぶ弱くなっている。
「はい。これで背後の心配はございません。また、資金面でも助けられました」
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