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「それだけではない。私としては、呈州の有望な者達を味方に引き入れられたことが大きいと思っている」
「ごもっともでございます」
香京は、先月の謁見を思い返していた。
人心掌握に長け、兵をよくまとめた龍角(りゅうかく)という男。
一人で数千の兵をも蹴散らす超水という青年。そう、彼はまだ青年なのだ。二十にもなっていないと聞いている。そんな男が、戦場では驚くべき活躍をするというのだから、興味を引かれないわけがない。いずれ、彼の活躍ぶりを見てみたいものだ。香京は密かに楽しみにしていた。
「沛黄よ。軍を万全な状態に調整するのだ。来月の頭にも、我々は進撃を開始する」
沛黄は素早く両手を合わせた。
「――承知」
†
貫州城で噂をされている二人、超水と龍角は、城から離れた場所にある軍の調練場にいた。
起伏の激しい荒れ地に、調練場はある。土が乾ききっているために植物がまともに育たず、あちこちがひび割れている。そこを放置しておくのも惜しいからと、香京が調練場に指定したのだそうだ。
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