第二章――出陣

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   龍角に見られていたらしい。 「俺が悔しかったのは、まだ自分の隊が完全でないと言われてしまったからです。ですが仕方のないことですね」 「赤州軍との連合隊か。うまくやっていけるといいな」 「向こうがどんな将を送ってくるか、ですね」  超水がふっと笑った時、 「おい、超水」  いきなり焚き火の向こう側から名前を呼ばれた。  顔を上げてそちらを見ると、そこには細身の男が立っていた。高い鼻と、髭の綺麗に剃られた口まわり。年齢は三十前後というところだろう。どこかで見たことがあるような気がする。 「ええと……誰だった?」  首をかしげると、男は「低く見られたものだな」と憤ったようにこぼした。 「俺は元呈州軍の将、紀流(きりゅう)だ。超水、お前とも槍を交えただろう」 「ああ……」  ようやく思い出した。  呈央城攻略の際、超水が一騎討ちでこの男を倒して捕らえたのだ。 「その紀流が、俺に何か用か?」 「そうだ。――沛黄様より命を受けた。俺は今より、超水隊の副将となる」  
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